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「天と地」レポート 熊野本宮大社九鬼家隆宮司 講話

イベント報告 2023年05月13日

2023年5月6日、展覧会「天と地 熊野をめぐる書巡礼」が開催中の賓日館の大広間で、熊野本宮大社九鬼家隆宮司に講話「甦りの熊野」をしていただきました。講話に先立ち、語り部の谷口佳子さんによる「熊野曼荼羅絵解き」が行われました。

※九鬼家隆宮司の「鬼」は上に点(ツノ)がない字体です。

【来場者の感想】

●日本の自然信仰の象徴、霊的な存在である熊野三山について、初めて聞くお話ばかり。中州にある大斎原(おおゆのはら)。何故、水に流されるような中州に神が舞い降りたのか、疑問に思っていたが、熊野川の水で浄化される聖域だと言うお話を聞いて納得。多くの方々がまた大斎原をお参りしていることも「甦り」だと思えてくる。災害は、決して悪いことばかりではないと、教えているのかもしれない。

熊野と言えば、三本足の八咫烏(ヤタガラス)。熊野三山で違う形をしているのは、きっと意味があるに違いない。なぎの枝をくわえているのは、前世の罪を浄める速玉大社。なぎの葉は、前世の罪障の象徴ではないかと、想像力を逞しくする。現世の縁を結ぶ那智大社の見返り姿のヤタガラスからは、過去を振り返りながら歩む人の姿を思う。本宮大社の羽根を広げているヤタガラスは、来世に大きく翔び立とうとしているように見えてくる。

全国にある7500か所の熊野大社のうち、本宮大社が6割を占めているのは、貪欲に来世までの安寧を願う、人の本性の現われか。

大自然の下、老若男女、身分、立場、貴賤、宗教、国や民族などの違いを超え、総ての人々が等しく清々しさを感じ、安寧を祈る場があることは、誠に有難いことだと思った。 (災害防止研究所代表、吉田明生)

●まず、「九」は宇宙と繋がっている数字。「鬼」は上の点はなく神という意味だそうで、宇宙と繋がる神の役目を持った苗字だと知ってビックリしました。特に本宮大社は未来に向かっての方向性を示してくれるとの事、直ぐにでも行きたくなりました。

白光先生の「天と地」の書巡礼の始まりの場所であり、宮司様の出会いがあればこそ100点の作品が出来たのだとわかりました。

また明治時代にお宮が大水で流されたのですが、高台に移転を決め なんと1年8ヶ月で再建したこともお聴きして熊野の方の強い信仰心と神がかって建ったのかとも思いました。

熊野は男女を問わず、なにびともお参り出来る所。今も熊野の人のおおらかさはそこから来ているのかとも感じました。

語り部の会、谷口さんの熊野曼陀羅絵解きの説明も感動し全国約5千社の熊野神社があるのも納得出来ました。

九鬼宮司様のお人柄にも感激して是非、熊野詣でに参りたいと思います。(三重県伊勢市 伊藤知佐子)

●谷口さんの曼荼羅の絵解きが立板に水、淀みが無いのに表現力豊かな話に魅了され楽しい限り、近いうちに熊野古道の案内をお願いしようと思いました。

本宮大社の九鬼宮司様には、本宮の知らなかった由緒などをお聞き出来て興味深かったうえに思いがけずも有難い「牛王符」、優しくも力強い文字の「手拭い」などを頂けとても驚き嬉しく、大切に飾っておくと決めました。

熊野方面には何人か友達も出来てご縁が深まっています。この先どんなワクワクが待っているか楽しみでなりません。(三重県多気町 花井和美)

●私が初めて柏木白光先生の作品を目にしたのは、平成25年に世界遺産熊野本宮館で開催された作品展でした。今回、伊勢二見の賓日館において「天と地」と題した作品展と併せて制作にゆかりのある方々の御講演が行われるとお聞きし、5月6日の熊野本宮大社九鬼宮司の御講演に併せて訪問させていただきました。

会場の賓日館は、国指定重要文化財の格調高い伝統建築物で当日は眩い日差しを浴びた庭園の木々が鮮やかな新緑を身にまとい私達を迎えてくれました。

建物に入ると、89箇所にも及ぶ熊野の聖地に赴き書巡礼された「書作品」が大小さまざまな部屋に展示されていました。

自身がその地に赴き、体感・体得された大地と空のエネルギーを書き記された作品に感動を受けました。特に印象に残った作品は「那智の滝」と「風」でした。那智の大滝の躍動感ある流れを表現して描かれた書に圧倒されました。風の書体も目の前で空気が動いているような気持になり、心が惹きつけられました。

今日は白光先生の聖地を描いた書作品と伝統ある日本建築の賓日館が相まって日本の心を垣間見えた気持ちにさせていただきました。

講演会では熊野本宮大社九鬼宮司から、「甦りの熊野」と題して熊野三山(本宮・新宮・那智)の主祭神のお話しや、カラス文字で書かれた牛王神符が三山特有の御神符であること。また、熊野信仰のお守りとしてではなく、戦国の時代には誓約書として用いられた歴史や、御新符の中央に押されている牛王宝印の解説をしていただきました。男女の隔てなく、浄不浄を問わず、何人も受け入れた聖地熊野の九鬼宮司さんは優しく親しみのあるお方でした。

熊野比丘尼の姿で登場された谷口佳子さんからは、熊野観心十界曼荼羅と熊野本宮参詣曼荼羅を用いて当時の熊野詣の様子、熊野にまつわる伝承を絵解きしていただきました。現在に蘇った熊野比丘尼の語りに導かれ、熊野参詣道を巡礼させていただきました。

再来年は「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されて20周年を迎えます。熊野の地で白光先生の素晴らしい作品に再び出会えることを願っています。(和歌山県新宮市 小守 充)